2019年11月に経済産業省から発表された「パネルの廃棄費用として10年間の積立義務化」が基となった太陽光発電所の廃棄の費用の積立制度が2022年7月1日からスタートします!
これにより、(残念ながら?)FIT認定を受けている10kW以上のすべての事業用太陽光発電事業者に発電所の撤去費用の外部積み立てが義務化されます。
もちろんFITマンの発電所も対象となります!
今回はこの制度の紹介と、導入の背景などご紹介いたします。
ポイント
「太陽光発電所の撤去費用の積み立て義務」について調べなきゃと思いながら、マダ・・・という方向けです!
「資源エネルギー庁:太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」
※現状ではパネル等は廃棄処理が主流ですが、JPEA(太陽光発電協会)のHPにて「太陽電池モジュールの適正処理(リサイクル)が可能な産業廃棄物中間処理業者名一覧表」を発見したので参考に掲載しておきます!
制度の概要
「廃棄等積立費用制度」について簡単に知りたい!という方に概要を説明します。
この制度が開始されると、「売電金額」から「パネルの廃棄費用」を強制的に積立にあてられるようになります。
給料から自動的に税金が源泉徴収されるイメージに近いですね!
産廃費用の積み立て対象となるのは、
FITもしくはFIP認定を受けた「10kW以上のすべての事業用太陽光発電事業者」で、
低圧発電所以上の発電所は漏れなく対象です。そうです、FITマンも対象です(涙)。
積立開始時期は売電期間(FIT適用期間)終了まで「残り10年目」となった日以降から売電期間終了までの10年間です!
2022年7月1日に既に残りの売電期間が10年未満となっている場合には、2022年7月1日以降の検針日から残り売電期間までが対象となります。
積立金額は売電単価ごとに、売電電力量1kWhあたりの「解体等積立基準額」が定められていて、
解体等積立基準額(円)×売電電力量(kWh)=積立金額
となります!
解体等積立基準額はFIT認定を受けた年度によって異なります。
認定年度 | 売電価格[円/kWh] | 解体等積立基準額[円/kWh] |
2012年度 | 40 | 1.62 |
2013年度 | 36 | 1.4 |
2014年度 | 32 | 1.28 |
2015年度 | 29/27 | 1.25 |
2016年度 | 24 | 1.09 |
2017年度 | 21 | 0.99 |
2018年度 | 18 | 0.8 |
2019年度 | 14 | 0.66 |
2020年度 | 13(事業用低圧)/12(事業用高圧) | 1.33/0.66 |
2021年度 | 12(事業用低圧)/11(事業用高圧) | 1.33/0.66 |
2017年度以降は入札対象外のケースでの価格となります。
入札対象で売電価格が決定した場合は、解体等積立基準額は異なります!
具体的な金額は下記リンクから確認することができますが、参考にFITマンの所有する発電所で考えますと、
0.66(14円案件の解体等積立基準額)×月間発電量9,910kWh(2022/3月実績)=6,541円
となります!
廃棄等費用積立ガイドライン(資源エネルギー庁)
積立金はもちろんいつかは返ってくるお金ですが、積立金を取り戻すための条件について資源エネルギー庁が公表するガイドラインには5つの条件が記載されています。
- FIT期間中に発電事業を終了する場合:発電設備の全体を解体・撤去する場合
- FIT期間中に発電事業を縮小する場合:太陽光パネルの15%以上かつ50kW以上を廃棄する場合
- 卒FIT後、発電事業を終了する場合
- 卒FIT後、発電事業を縮小または一部の太陽光パネルを交換する場合:太陽光パネルの15%以上かつ50kW以上を交換する場合
- 卒FIT後、全ての太陽光パネルを交換する場合
取戻し申請には解体を実施することを証明する書面や、解体費用の見積書などの提出、および審査を受ける必要があるため、事前に手続きを確認することをおすすめします!
廃棄等積立費用制度導入の背景
では、この制度が導入されるに至った背景を簡単にご説明します。
実はFIT制度の価格の中には太陽光発電所の産廃費用が織り込まれています。
でも実際に産廃費用を積み立てている業者は少なく、産廃費用の確保どころか保守やメンテナンスを実施しない悪質な事業者が多く存在したことが原因で、太陽光発電所の事故やトラブルが頻発しました。
この問題解決のため、2017年にFIT法が改正され、50kW未満の太陽光発電所の保守・メンテナンスが義務化されました。
今回のテーマである廃棄等積立費用制度制度の義務化も事業者による発電所の保守管理力を強化する狙いがあり、卒FIT後の発電所の放置・不法投棄の抑止を目的としています。
特に、太陽光パネルには鉛やセレンなどの有害物質が含まれているため、適切な産廃処理を行わず放置すると土壌汚染などにつながる恐れがあります。
産廃費用を内部積立している事業者が少ない状態で、大量の太陽光発電所が卒FITを迎えると、多くの発電所が放置されるであろうことは容易に想像ができます!
そのため、発電所の導入から管理、廃棄までのサイクルがトラブルなく円滑に回せるよう法整備することで事前に問題発生を防ぐことを目的として、強制的に産廃費用を徴収することに至ったわけです!
※近年参入された事業者の方はメンテナンス行うことが当然になっているので、やり切れない思いはありますが・・。
事業者の視点からみると
制度導入の背景や目的はつかめたものの、太陽光発電事業者側としては、すんなり受け止めることが難しい部分もあります。
設備導入時に立てた資金回収や収益のシミュレーションプランが狂ってしまったり、一部資金が手元に残らなかったりといった理由からネガティブに受け止める事業者も少なくありませんよね!
積立金額の払い戻しは発電設備の撤去時(もしくは設備の縮小や交換時)に限られるため、20年後以降も引き続き運用したい事業者にとっては、積立金をすぐに取り戻すことができないというジレンマにつながります。
基本は外部積立
また「廃棄費用も自分でちゃんと確保(内部積み立て)しながら運用してきたのに、外部積立を適用されたら、また一からキャッシュフローを計算し直さなくちゃいけない…」というパターンもあり得ます。
「あれ?内部積立も認められているよね?内部積立でいいや~」
という方もいるかもしれません。ただし、条件があります!
一応、「長期安定的な発電事業の実施に向けた事業計画の作成と公表」によって内部積立が認められていますが、上述の廃棄等費用積立ガイドラインを参照するとプロジェクトファイナンスや上場インフラ投資法人等が例示されていますので、個人事業主の方等にはかなりハードルが高いのではないかと推測しているところです。。
なお、参考に条件としては次の1~6の条件をすべて満たすことが必要となります。
(1)電気事業法上の事業用電気工作物に該当すること。
(2)事業者が電気事業法上の発電事業者に該当すること。
(3)外部積立水準以上の費用を内部積立する予定を組み、その公表することに同意すること。
(4)年1回の定期報告のタイミングでしかるべき額の積立がされており、その公表に同意すること。(修繕など一時的に下回る場合は原則として1年以内に再び条件を満たすこと)
(5)金融機関や会計士等により、費用確保の可能性が定期的に確認されていること。
(6)上記(1)〜(5)を満たさなくなった場合、遅延なく外部積立を行うことに同意すること。
まとめ
太陽光発電所の産廃等の費用積立金制度についてご紹介しました。
- 「再エネ普及を促進しているはずなのに、後出しで売電収入を削るルールを作るのはなんだか腑に落ちない…」
- 「ちゃんと産廃処理するのに一部の事業者が手抜き管理することで取り締まりが強化されてしまった…」
- 「廃棄処理ではなく、リサイクルの販路の拡大にも力を入れてほしい」
などなど、いろいろな観点から感想があると思います。。。
ただし以前の記事でも太陽光発電所のメンテナンス不足で起こり得る事故リスクをご紹介した通り、政府としては産廃費の確保を事業者自身に委ねることで、不要になった発電所の放置や廃棄が発生し、そんな放置された発電所が原因で事故や環境問題につながるリスクが0とは言えないというところだと思います。
みなさんは産廃等費用積立金制度についてどう思われますか?
ご意見頂けたら嬉しいです!