「あー、こんなに天気が良いのに出力抑制かかってるじゃん・・・」
さて、今回はみなさんのテンションを爆下げしてくれる「出力抑制」のお話です!(笑)
九州電力管内で出力抑制が開始されてから、順次適用する電力会社が増加し、今では東北、四国、中国そして5月8日には北海道電力管内でも実施されたそうです!。。。_| ̄|○
皆さんも元気がみなぎっている状態の時って、バリバリ活動して仕事もドンドン進みますよね!
そんな時に
「いや、そんなに頑張らなくてもいいよ。今マンパワー足りてるから。20%くらいの力でよろしく」
と言われたら、肩透かしを食らった気分になっちゃいますよね!。。。_| ̄|○
今回ご紹介する太陽光発電所の出力抑制は、そんな「全力出さなくていいよ」的なお話です。
出力抑制とは?
一言でいうと、「せっかく売電した電力を電力会社に買い取ってもらえない」ことです!ガーン
出力抑制は電力品質を保つために必要
それでは「なぜ出力抑制が必要」なのでしょうか?
電気をつくる発電所といえば、
- 水力発電所(ダム)
- 火力発電所
- 風力発電所(ウィンドファーム)
- 太陽光発電所(メガソーラー、低圧)
に至るまで全てが含まれます。
発電所で生まれた電気は、送電線や配電線といった「電気の通り道」を伝って、電気を消費する各家庭や工場、オフィスといった需要家に運ばれていきます。
しかし、この「電気の通り道」には「制限速度」のようなものがあります。
電圧が高くなりすぎたり、低くなりすぎたりして、定められた一定の範囲を外れてしまうと電力品質が悪くなってしまい、家電製品が動かなくなったり、工場で製品が正常に製造できなかったりといったトラブルにつながってしまいます!!
(それは困った!)
実は出力抑制は太陽光発電の接続可能量を増やすために必要!
これまでの電力系統では、発電所から需要家へと一方通行で電力が流れていたので、電圧や周波数を需要に応じてコントロールすることが可能でしたが、「小型の電気を造り出す設備(分散型電源)」が増えて、需要家から「電気の通る道」に電気が逆に流れる(逆潮流)が発生するようになりました。
太陽光発電の場合、晴れた日の日中は需要を大きく上回る電気が生まれます。
電気の通り道に接続される小型の太陽光発電所(分散型電源)1件あたりの発電量は、電気の通り道全体に含まれる電力規模と比べれば影響力がありませんが、導入数が増えれば増えるほど、電気の通り道全体の電力品質を変えてしまうほどの影響力を持ちます。
特に昼間の電力需要が下がる時間と、太陽光発電の発電量ピークを迎える時間が重なると、火力発電を制御するだけでは需要を供給が大きくオーバーします。
この状態では大規模停電につながってしまうので、そのリスクを回避するため個々の電源の出力抑制が必要になるわけです。
実は、この出力抑制制度が導入されたのは、太陽光発電や風力発電の接続可能量を増やすことが目的なんです!
「あれ?じゃ、どうして制限をつけるの?」と思いますよね??
実は電力系統には、
「電力需要がもっとも少ない状況」
を基準として太陽光発電の接続可能量が定められています。
出力抑制を行わないと、売電できる人や施設が限られてしまうため、より多くの太陽光発電が導入できるよう、出力抑制を行って接続制約を緩和しているということなんです。
いわゆる、「電車の座席」みたいな感じ??ですかね!
座席の面積(接続可能容量)は限られているので、ひとりひとりの乗客(1軒ごとの発電所)が間隔を詰めたり身体を小さくして座る(出力抑制を行う)ことで、より多くの人が利用可能(接続可能)になります!!
出力抑制には順番がある~太陽光は8番目!~
では実際の出力抑制の仕組みについてご紹介します。
リストにすると次のような順番で出力抑制が掛かります。
1.調整力として確保した発電機の出力抑制
2.オンラインで調整できる発電機の出力抑制
3.オンラインで調整できない火力電源などの出力抑制
4.オンラインで調整できない揚水式発電機の用水運転抑制
5.他電力会社区域への供給による下げ調整
6.バイオマス専焼発電の出力抑制
7.地域資源バイオマス電源の出力抑制
8.自然エネルギーによる変動電源の出力抑制(太陽光発電、風力発電)
9.全国規模での電力供給による調整
10.原子力・水力・地熱発電の抑制
つまり、太陽光発電は8番目に出力抑制がかかるわけですが、現在はその8番目が頻発していることになります・・・!
出力抑制のルール~現在は年間360時間or無制限~
出力抑制対象となる太陽光発電設備は、全ての規模です。
2015年までは500kW以上の太陽光発電所のみが出力抑制対象でしたが、2015年のFIT制度改正に伴って出力抑制ルールが見直され、発電所容量を問わず全てのシステムが出力抑制対象となりました。
また、これまでは出力抑制が行われる上限として、年間30日が定められていました(「30日ルール」、「旧ルール」)。
このルールが時間単位に切り替えられ、無償での出力抑制の上限は年間360時間となっています(「360時間ルール」、「新ルール」)。
その他、指定された区域内の太陽光発電について、接続可能量を接続申し込み量が上回る(上回る見込みの)場合に、360時間を超えても上限なく無償で出力抑制を要請できる「指定ルール」があります!
いずれのルールが適用されるかは、電力会社エリア、発電所の規模、系統接続の開始日によって異なります。
出力抑制の方法
太陽光発電の出力抑制は、パワーコンディショナーで行われます!
(太陽光パネルで作った電力を、電力系統に流れていかないようにパワコンがせき止めるイメージ)
特に360時間ルールが適用される場合には、リアルタイム制御指示器や制御機能付きパワーコンディショナーを導入するなど、遠隔出力制御システムの導入が義務付けられます。
なお、時間単位での出力抑制が可能となるようなコントロールシステムが必要となり、対応していないパワーコンディショナーの場合には、対応のために追加費用がかかることもあります!
(ただしこれまで出力制御の対象ではなかった発電所が2022年4月以降に出力制限対象となる場合などは「出力制御機器の設置義務のない新ルール」が適用される場合もあります)
電力会社からの出力抑制には必ず応じなくてはならず、出力抑制されている間はせっかくつくった電気は無駄になってしまいます。
エコと投資の両方を目的として自然エネルギーを電力に変換しているのに、それを使わずに捨てなくてはならないなんて、何だかなぁという気持ちになってしまいますね。
各電力会社の出力抑制ルール表
太陽光発電に対する出力抑制ルールの適用は契約する電力会社ごとに異なります!
この電力会社に接続する事業用低圧太陽光発電所の適用ルールについて下の表にまとめてみました。
電力会社エリア | 発電所規模 10~50kW(事業用低圧太陽光発電) |
東京電力 中部電力 | 2021/3/31以前の接続申込→対象外 2021/4/1以降の接続申込→指定ルール |
関西電力 | 2015/1/25以前の接続申込→30日ルール 2015/1/26~2021/3/31の接続申込→360時間ルール 2021/4/1以降の接続申込→指定ルール |
四国電力 | 2014/12/2以前の接続申込→対象外 2014/12/3~2016/1/22の接続申込→360時間ルール 2015/1/25以降の接続申込→指定ルール |
沖縄電力 | 2015/1/25以前の接続申込→対象外 2015/1/26~2021/3/31の接続申込→360時間ルール 30日等出力制御枠を超過した後の接続申込→指定ルール |
北陸電力 | 2015/3/31以前の接続申込→対象外 2015/4/1~2017/1/23の接続申込→360時間ルール 2017/1/24以降の接続申込→指定ルール |
中国電力 | 2015/3/31以前の接続申込→対象外 2015/4/1~2018/7/11の接続申込→360時間ルール 2018/7/12以降の接続申込→指定ルール |
北海道電力 | 2015/1/25以前の接続申込→30日ルール 2015/1/26以降の接続申込→指定ルール |
東北電力 九州電力 | 2015/1/25以前の接続申込→対象外 2015/1/26以降の接続申込→指定ルール |
30日ルール=年間30日を上限として出力制御
360時間ルール=年間360時間を上限として出力制御
指定ルール=無制限・無補償で出力制御
まとめ
今回は出力抑制についてご紹介しました!
太陽光発電の出力抑制の目的は2つです。
- 電力系統の需給バランスをとり、電圧や周波数といった電力品質を保つこと。
- 電力系統の接続可能量内に、新規導入する太陽光発電所を収めるため。
とはいえ、当初シミュレーションから乖離する要因で、利回り想定が変わってしまうので、事業主にとってはとてもシビアな問題ですよね!
また、最初に申し上げたとおり、出力抑制を実施する電力会社が急速に増えているのも気になる傾向です!
(以下の記事の様に、お試しなのではないかという意見もありますが、警戒するに越したことはないかな)
また、出力抑制は全ての電源規模が対象になっていて、パワーコンディショナーで行われますが、出力抑制を受けるための遠隔出力制御システムの導入が義務付けられるのがネックですね。
出力抑制の第二段として、東京電力管内での出力抑制のご紹介を予定しておりますので、こちらも読んで下さったら幸いです!