さて、前回の記事で太陽光発電所の保守・点検義務について記載しました!
やはり発電所の運営は安心が一番・・・
ということで、日常点検は具体的にどの様にやるのかを見ていきましょう!
かつては50kW未満の太陽光発電所はシステムのメンテナンスなどは義務化されていなかったのですが、現在では容量を問わず全ての太陽光発電所の定期的な保守・点検が義務付けられています。
そもそも自分の低圧事業用太陽光発電所から火災が発生したり、売電量が低下するのも困りものです。。。
それでは「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」に具体的な保守・点検方法が書いてあるかと言えば、メンテナンスのガイドラインが提示されているのみです。。
それなら、そのガイドラインはどのような保守・点検を推奨しているのかひも解いてみましょう!
今回は太陽光発電所の保守・点検の方法の要点を「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」に記載されている内容をもとに、わかりやすくご紹介します!
参考資料:「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(一般社団法人日本電機工業会・一般社団法人太陽光発電協会)
太陽光発電の保守~O&M~
保守という言葉を辞書で調べると
「正常な状態を保ち、それが損じないようにする」
「人工物が正常な状態を維持できるよう手入れすること」
「点検、修理、整備、交換、補充などの作業を含む行動」
などの意味が記載されています。
これを太陽光発電システムの保守にあてはめると、「システムが正常な状態を維持できるように、点検や修理などの作業を行う」ことを保守というわけですね。
保守と点検はワンセットで使われることが多く、O&Mと呼ばれています。
O&MはOperation(オペレーション)&Maintenance(メンテナンス)の略です。
場合によっては運用管理も意味合いに含まれることもあります。
太陽光発電投資を行う場合のO&Mは、安全を確保するだけではなく、収益を確保することも重要な目的です!
「O&MをしないとFIT認定を取り消されてしまう」というよりも、「O&Mすることで発電量(収益)を正常にキープする!」という前向きな理由で取り組めたらいいですね!!
「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」の前提
「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」では、システムの状態や設置された環境に応じて細かくチェックポイントが設けられています!
また、点検頻度は発電所の環境にもよります。
確かに、使用する部材の材質や近隣に樹木や建物があるかどうか、土埃や塩害などが発生する場所か、鳥や小動物、野生動物などが住みやすい環境かによって重点を置きたい点検項目や点検の頻度は異なりますよね。
ガイドラインに示されている点検の時期は「設置年数ごとの点検」と、「日常点検」に分かれます。
設置1年目、5年目、9年目(以後4年ごとに実施)、20年目以降(以後4年ごとに実施)に行う点検の種類は、専門技術者による点検が推奨されています。
日常点検は毎月1回程度に加え、地震や台風、悪天候や火災、落雷などの後にシステム所有者が実施することを推奨しています。
今回はこの日常点検にスポットをあててご紹介します!
【点検項目】システムの設置状態による分類
システムの設置状態 | 点検内容 |
地上設置システム | ・システムの基礎付近に土壌侵食、地盤沈下、膨張土、凍結深度の影響、積雪による沈降、不等沈降、地際腐食、架台多重連結による膨張変形、排水設計不備による基礎の洗堀、積雪・雨水による盛土地盤の崩壊はないか? ・太陽電池や配線、筐体(外観)に草や木が干渉していないか? ・システム外周に適切なフェンスや標識があるか?傾きや損傷などの不具合がないか? ・フェンスに適切な出入り口があるか?鍵は正常に施錠されているか? ・徐行情報を掲示した標識(20kWは必須)、立ち入り禁止の標識は見やすい場所に設置されているか?破損や傾きはないか?文字の視認性が損なわれていないか? (・追尾装置を採用しているシステムでは、アレイが正しく太陽の方角を向いているか?) |
【点検項目】機器ごとのチェックポイント
※↓スマホの方は横向きにして頂いた方が良いかと思います!
点検対象の機器 | 点検内容 |
パワーコンディショナ及び収納盤、基礎・土台 | ・パワーコンディショナのランプとディスプレイの表示内容に異常はないか? ・パワーコンディショナ筐体(外観)に傷や腐食はないか? ・パワーコンディショナは正しく施錠されているか? ・パワーコンディショナ内部に水やほこり、げっ歯類の動物が入り込んだ形跡などはないか?(糞、かじった跡) ・パワーコンディショナ内部の接続端子上のトルクマークの位置にずれがないか?焦げ跡はないか? ・フィルタの汚れや劣化はないか? ・冷却ファンやエアコンの作動は正常か?異臭や異音はしないか? ⇒FITマンパワーコンディショナ内部のチェックまでしていなかったなと反省です! |
接続箱、集電箱、断路器、開閉器 | ・接続部のトルクマークの位置にずれがないか? ・ごみや浸水の形跡がないか? ・端子、ボード、ヒューズホルダに焦げ跡がないか?アークによる変色の有無はないか?ケーブルにかじった跡はないか? ・接触面にほこりの蓄積の有無はないか? ・機器材質に膨張や腐食の形跡はないか? ・筐体の腐食や劣化はないか?接地接続、ヒンジ、ロック機構は正常な状態か? ・断路器又は開閉器は正常に動作しているか? ・ヒューズは正常に動作しているか? ⇒焦げ跡は確かに気を付けて見ないと! |
太陽電池モジュール・アレイ | ・モジュール表面に亀裂、剥離、破損、焦げ跡などはないか? ・スネイルトレイル(セル表面に黒または白の線状の模様)が発生していないか? ・土や落ち葉、動物などのフンによる過度の汚れが蓄積していないか? ・コネクタは正常に接続されているか?損傷や浸水はないか?気密性は保たれているか? ・アレイの下にゴミや異物が飛来していないか? ・アレイの下に動物や虫、鳥などの侵入はないか? ・熱画像(※1)に異常は見られないか? ・絶縁抵抗測定値(※2)は正常な範囲か? ・ストリングの開放電圧、電流、I-V曲線(※3)は正常か? ・モジュール・アレイへの植生の干渉はないか? ⇒パネルの清掃は定期的に行っていますが、意識してスネイルトネイル等は見ていませんでした! |
配線 | ・太陽電池モジュールおよびストリング配線は正常か?ケーブルに擦れやダメージがないか? ・ストリングの結束バンドに破断や損傷はないか?導体への影響はないか? ・太陽電池サブアレイケーブルに、筐体、つなぎ目、暴露された場所での摩耗の兆候はないか? ・絶縁抵抗の測定値は正常範囲内か? ⇒ケーブルのダメージもキチンとチェックしないとですね!! |
設地 | ・筐体、架台構造、フレーム、配線路、機器の基礎 ・土台部分の接地接続は正常か? ・接地抵抗の測定値(※2)は正常範囲内か? |
電線路 | ・電線管・トレイの指示、ブッシング、ガスケット、接合部の摩耗や腐食はないか? ・電線路のトレイカバーを外し、配線内容を確認する。配線内容に異常はないか?げっ歯類や異物の侵入の形跡はないか? ⇒動物の侵入等も気にしないといけませんね・・ |
架台 | ・アレイ支持物にさびや腐食、垂れ、変形、破損はないか?ボルトにゆるみはないか? ・地盤沈下、膨張土、凍上などが発生していないか? ・杭に腐食はないか? ・周辺の植物が架台に干渉していないか? ⇒メンテナンス契約の際にボルトの緩みの発覚がありました! |
※1 太陽光パネルを赤外線カメラで撮影して熱分布から異常がないかを診断します。
※2 絶縁抵抗計を使って測定します。太陽光発電システム用だと発電中でも影響を受けずに正確な絶縁抵抗値を測定できます。
点検項目で異常が見られる場合、部品交換など自力で解決ができる場合は対応することができますが、パワコンに異常が見られる場合にはメーカーや販売店などに問い合わせすることをお勧めします!
不具合を早期に見つけられれば、修復にかかる手間や費用、発電の損失も最小に抑えることができます。
日常点検が習慣化できれば発電所オーナーとしてのレベルもアップしちゃいますね!
まとめ
太陽光発電所の日常的な点検項目について紹介しました!
点検項目は多岐にわたりますが、基本的には「いつもと違うところがないか!?」と間違い探しだと思えば、楽しく実行できそうですね。
ちなみに「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」は、かつてシステム規模によって複数のガイドラインが存在しましたが、現在ではすべての発電所に共有した内容となっています。
FIT適用でない非FITのシステムのガイドラインとしても活用できます。
発電所を正常な状態で運用するために、ぜひこの記事を参考にしてみてください!