2017年に発表された改正FIT法で、容量を問わずすべてのFIT法が適用された発電所に対して「適切な点検・保守(メンテナンス)」が義務化されました。
太陽光発電といえば「メンテナンスフリー」という謳い文句で知られているにも拘らず、どうして点検やメンテナンスが義務化されるのか不思議に思ったことはありませんか!?
今回は太陽光発電所の運用をするにあたって点検やメンテナンスがどれぐらい重要か、事故事例を交えてご紹介します!
こんな方におすすめ!
- メンテナンスの必要性について知りたい!
- 過去にどんな事故が発生したのか知りたい!
↓FITマンのメンテナンス?事例
事故事例
発電所の点検・メンテナンスによって発見が期待できる不具合には、発電量の低下以外にも、深刻な事故を引き起こすケースもあります!
例えば、パネルの留め具の緩みやガラスの割れなど、きっかけが些細であっても、そこに台風や地震などの大自然の脅威が加わることで大きな被害に発展した事例があります。
ここでは3件の事故の例を、外部のニュースサイトから引用して掲載します。
①雪の時に架台が折れてパネル崩落
雪国の太陽光発電所は、設計段階からある程度、積雪に対応している。
アレイ(太陽光パネルの設置単位)の設置角を30~40度程度まで傾けて雪が滑り落ちやすくしているほか、パネルから落ちた雪が山になってもアレイと繋がらないように、地面からアレイ最低部との設置高を1m程度など大きく確保しているサイトが多い。
しかし、今回のように短時間で激しい降雪があると、太陽光パネルから滑り落ちる間もなくアレイに大量の雪が積もってしまい、架台に大きな荷重がかかる。
この荷重にアレイ後方を支える支柱が耐えられずに北側に押しつぶされてしまうと架台全体が崩壊してしまう。
日経BP「メガソーラービジネス」より引用
令和3年から令和4年にかけての年末年始は、ラニーニャ現象による豪雪被害が各地で発生したのは記憶に新しいですよね。
この雪害が太陽光発電所にも影響した事例です!
これは積雪量が想定している荷重量を大きく超えてしまったことが原因ですが、架台のビスの緩みや、そもそもの設計に問題が無かったか、点検やメンテナンスでもしかしたら発見できていたかもしれませんね!(可能性ですが(笑))
②台風でパネル飛散
2015年9月の台風15号の台風による事故では、太陽光発電パネルが発電所構外に飛散し、多数の住宅や車両を損壊する被害が発生した。同協会は、このような被害の再発を防止するため、台風シーズンが到来する前に、設置者がそれぞれの責任において、太陽電池パネルなどの飛散による被害防止のため、万全な対策をとるよう注意を促している。
環境ビジネスオンラインより引用
埼玉県川島町にある出力約7.55MWの国内最大級の水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)「川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク」が、8月22日の台風9号によるものと思われる強風と高波で損傷した。
水面に浮かべた架台とそれに取り付けた太陽光パネルのうち、周辺部のフロート式架台がめくれ上るなどして152枚(41.8kW分)が損傷した。
日経XTECHより引用
損傷した原因に関し、スマートエナジーでは、「フロート式架台メーカーの設計基準より、水位が1m以上高くなって上下動が激しくなり、その状態で横風を受けたため、船が転覆するのと同じような状態になったと想定している」との見方を公表した。
日経XTECHより引用
この事件については経済産業省が発表した「事業用太陽電池発電設備に対する台風期前の点検強化の周知依頼について」及び「一般用太陽電池発電設備に対する台風期前の点検に係る周知について」の中で、『水上設置型太陽電池発電設備の支持物(架台、フロート、係留索、アンカー)について、アンカーとの係留部やフロート間等の接合部に損傷等が無いことや、フロート等の樹脂部材の劣化が無いことを確認すること。』とメンテナンスの方針を指示しています。
台風時に表面化するメンテナンスの不足の代表的なものは、太陽光発電設備の各部を接続しているボルトの緩みが原因となるものです。
パネルと架台を結ぶボルトの緩みは経年によりだんだん緩んできます。
これを放置すれば、台風時に太陽光パネルが飛散・変形する原因となってしまいます。
③電気関連のショートでの火災発生
先月、米流通最大手ウォルマートは、太陽光発電の火災に関してテスラを相手に訴訟を起こした。
ウォルマートによると、テスラの設置した太陽光発電設備が、ウォルマートの7店舗で火災を起こしたという。
ウォルマートは、同社の7店舗で起こった出火の原因を以下のように分析している。
●太陽光パネルに発生していたホットスポットの見落とし。
その他には、アーク放電とワイヤの損傷、不適切な接地、配線ケーブルの不適切な管理、コネクタの不適切な締め付けトルクなどが指摘されていた
メガソーラービジネスより引用
出火原因が分析の通りだとしたら、典型的なメンテナンス不足によるものですね。
また、太陽光パネルの火災が発生した場合、周辺に雑草が繁茂している状態だと炎が引火し、設置環境によっては大規模な火事に発展するおそれもあります。
消火活動をしたくても、感電する恐れがあるため、太陽が出ているうちはパネルに水をかけることができません。
なので、雑草の除去というのも結構重要なメンテナンスだったりするんです。
事故事例を見ていると「自分の所有する発電所が崩壊してしまったら」「飛散したパネルが家や車、人にぶつかって取り返しのつかないことになってしまったら」と思うと背筋が冷たくなってしまいますよね。
太陽光発電所を持つ人は、他人事ではないことを肝に銘じておく必要があるのではないかなと思います!
さて、点検の必要性を感じて頂いた?!ところで、太陽光発電設備の点検義務について見ていきましょう!
点検の義務化とその適用条件
改正前のFIT法では、50kW未満の太陽光発電設備は指定した条件を満たしていれば、設置後の保守点検や維持管理をしなくても、制度上での問題はありませんでした。
FIT開始時は「メンテナンスフリー」という認識を鵜呑みにして、設置後の発電所の整備や保守を怠った事業者が多く、その結果、設備の故障や周辺地域に被害を及ぼすような事故が各地で多発しました。
その事態を改善すべく改正FIT法が施行される、という流れに至ったわけです。
現在では50kW未満の発電所でも、自主点検・メンテナンスが義務化されています。
とはいえ、具体的にどのようなメンテナンスをどの程度の頻度で行うかについては明確化されていません。
資源エネルギー庁は、メンテナンスのガイドラインとして「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(一般社団法人日本電機工業会・一般社団法人太陽光発電協会)を推奨しています。
このガイドラインでは、システムの設置環境ごとの理想的なメンテナンス項目や実施頻度が紹介されています。
主な保守・点検の方法として「目視点検」「測定機器を使った数値測定」などが紹介されていて、具体的には、除草やモジュールの清掃、消耗部品の交換、目視による各種設備の劣化や腐食、施錠の確認などが記載されています。
点検・メンテナンスしない場合のリスク
点検・メンテナンスしない場合のリスクは大きく分けて3つあります。
1つはFIT認定が取り消しになる恐れがあるということです。
つまり、最悪の場合売電ができなくなってしまう可能性があるんです。
この事態はなんとしても回避したいですね!
2つ目のリスクは発電量の低下です!
太陽光パネルは駆動部分がないため、基本的に故障が少ない作りになっています。
とはいえ、物理的なダメージを受けたら当然不具合が生じます。
例えば太陽光パネルをカバーするガラスは、自動車ガラスに似た強化ガラスが使われていますが、決して割れないというわけではありません。
表面にひびが入り、その隙間から雨水が侵入しセル内に浸透すると、部品の腐食と劣化がじわじわ進み、最終的には発電しなくなる恐れがあります。
また落ち葉や鳥の糞などが付着することでピンポイントに影が出来てしまった場合、その箇所が発熱する「ホットスポット」が発生する場合があります。
ホットスポットが出来ると、セルが損傷してしまい、こちらも発電量が低下してしまうんです。
ほかにもパネルと接続箱をつなぐプラグにゆるみが生じて抜けてしまっても、せっかく作った電気は無駄になってしまいます。
早めに異常に気付いて、部品交換したり、掃除したり、プラグを差し込み直せば損害は最小にとどめることができたわけですから、メンテナンスの重要性を認識せざるを得ませんよね!
発電所が機能しなくなってしまったら大損害です。こちらの事態もなんとしても回避したいですね!
最後の1つは大事故につながるというリスクです。
最初に記載したニュースの様なケースですね!
ニュースになってしまうくらいの事故ですと、他社に損害を与えることにより、損害賠償を受ける可能性や、そうでなくても近隣住民からの苦情や行政からの指導も想定され、考えるだけでも恐ろしくなります・・・。。
まとめ
改正FIT法で、すべての太陽光発電所に点検・メンテナンスが義務化されました。
点検・メンテナンスを怠ると、FIT適用が取り消しになる以外に、発電所の不具合に気付くのが遅れて、発電量が大幅に下がったり、パネルの飛散や崩壊などにより周辺地域に被害を及ぼすような大惨事を引き起こしたりするリスクがあります!
発電所の点検を年に数回行うサービスプランをもつ民間業者もいます!
忙しい場合はこういったプロに依頼して、発電所の健康診断をお任せするのもひとつの手段ですね!
人間も太陽光発電所も、健康一番です!
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